『沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい』(ルカによる福音書5章4節)
園長 秋山千四郎
子どもの頃、函館に住んでいたので、夏休みはよく海水浴に行った。石川啄木の像のある大森海岸まで歩いて30~40分だった。そこは結構、波の荒い海岸だったので、泳ぐ大人はいても、子どもは岸辺で波と砂とにたわむれているばかりだった(大森海岸は、今は遊泳禁止となっているらしい)。
ある時、父親が「一緒に沖まで行こう」と言った。私の父親は元海軍で、泳ぎは達者だった。ちょっと怖かったが、少年の好奇心・冒険心の方が強かった。それで私は浮輪にすっぽりと納まり、浮輪にしがみ付くようにして、その身を父親に任せた。沖に出るまでが大変だった。何度も荒波をかぶり、引き返したい思いに駆られた。しかし、荒波の区間を過ぎると、そこは別世界だった。海の深い青色、ゆるやかにうねるような波、遠くに見える海岸と海水浴客たち、そして静けさ。これまで自分が知っていた「海」とは、まったく別の「海」がそこにはあった。私の子ども時代の、忘れられない思い出の一つだ。
さて、夏休みは終わり、二学期が始まった。一学期を「岸辺で過ごす」学期だとすると、二学期は「沖に漕ぎ出して」行く学期となるだろう。子どもたちに、別世界が、新しい世界が開かれて行く学期だ。しかし、そのためには、ちょっぴりの勇気と、少々波をかぶる覚悟と、子どもたちを責任をもって導いてくれるプロのインストラクターが必要だ。そして幸いなことに、私たち北見のぞみ幼稚園には、条件はすべて整っている。ならば、沖に漕ぎ出し、網を降ろし、二学期の私たちの漁を始めようではないか。「大波のように 神の愛が わたしの胸に 寄せて来るよ。漕ぎ出せ 漕ぎ出せ 世のうなばらへ。先立つ主イエスに 身を委ねて」(讃美歌第二編171番)との讃美歌を歌いながら。
『た め す』
副園長 竹田祐子
二学期が始まり、園舎に子どもたちの元気な歓声が戻って来ました。今年の夏は本当に暑い日が多く、テレビからは熱中症予防を呼びかけるニュースが毎日のように流れ、北海道でさえ、ここまで気温が上がると戸外で思い切り遊ばせるのは心配だったのではないでしょうか。約一ヶ月の夏休み、皆さんはどのように過ごされましたか?それぞれのご家庭で、ステキな思い出がまた一つ増えたことでしょう。
さて二学期は約四カ月間、一番長くまた大きな行事もあり、子どもたちの頑張り、成長が楽しみな学期です。『ためす』という主題が与えられた九月は運動会があります。本番まで三週間弱という期間の中で、子どもたちが初めてのことにも、勇気を持って取り組むことができるように心から祈ります。
ここでたまたま手にした本にあった文章を紹介したいと思います。『ある体操教室でのこと。コーチが「後転を練習します」と言った時、子どもたちは口々に「無理」「できない」と言い出しました。コーチは「最初からうまくできないのは当たり前。だから練習するのだし、できた時はうれしいんだよ。だから「できない」じゃなくて「やってみよう」って言おうね!」と言いました。それを聞いた子どもたちは、頑張って後転に挑戦していました。もしその時にコーチが「やる前から「できない」なんて言うんじゃない!」と叱っていたら、果たして子どもたちはやる気になったでしょうか?子どもは大人の言葉によって変わる。子どもたちが自分を大事にし、自信を持ってチャレンジしていけるような言葉を使っていきたいですね』。
『言葉に気をつけよう』というタイトルが付いたこの文章(抜粋ですが)は、臨床心理士の人が書いたものです。まさに『ためそう』と頑張る子どもたちをサポートする大人への大切な示唆ですね。『自分の頑張りを見てもらう』、つまり『見せる』を意識して舞台に立つということは簡単なことではありません。様々な経験を積みながら、小さな頑張りを喜び合い、自信に繋げられるように見守ること、すごく時間のかかることです。子どもたちの小さな頑張りをたくさんみつけられる大人になりましょう。